南望庵コラム・「こころおぼえ」令和七年六月吉日
今月より、ご時候に合いました事柄や風情など心赴くままに書き連ねる日録を掲載していきたいと思います。お楽しみいただけましたら幸いに存じます。
去る6月1日は、茶道宗徧流岡崎支部100周年記念祭が催され、出席された門人方々はじめ、古より数多く宗徧流に関わった年配の先輩方もお越しくださり、先人たちの耐え難い努力と歴史を改めて深く感じ入りました。
宗徧流は武家茶道を色濃く残した礼の精神を重んじる大変丁寧な所作や作法が特徴的であり、当時の武士といえば、儒教の基礎「四書五経」の経書を必読とし、仁義礼智信の志を高くする生き方が最も重要視されていました。
日本の茶道は仏教の禅を基本としていながら、人々の多くは古くから儒教的精神を尊んでいたために、人への思いやりや配慮を所作や礼儀として表す事が徳の高さとして見做されています。
そういった意味で宗徧流は、他流より地味で侘び寂びの要素が濃く少々厳しいのかもしれません。一朝一夕に身に付くものではございませんが、日々の稽古を積んで美しい所作と品格のある大和撫子を目指して参ります。